クラウド導入のメリットと課題は?IT部門が考える現状・目的から今後の計画まで徹底調査!

クラウド導入に漠然とした不安を感じて躊躇していませんか?また、クラウド導入を進めたものの、どこまでクラウド化すべきなのか今後の方針を決めかねていませんか?そのような場合、他社の検討状況や今後の方針を参考に失敗なく進めたいと情報収集に終始してしまうこともあるでしょう。

そこで今回は、従業員数500名以上の企業に務めるIT部門のリーダー500名に「クラウド導入の現状・目的から今後の計画まで」をイギリスの調査会社Censuswideに委託し、調査結果をまとめました。この記事を読むことで、他社がクラウド導入を進めている理由や対象範囲、今後どこに力を入れていくべきかを理解することができます。

それでは早速、クラウド導入の理由からみていきましょう。

1. なぜクラウドを導入するのか

柔軟性向上のためにクラウド導入を進める企業が増えている今、各企業のIT部門担当者は常に既存システムへの影響を最小限に、かつ投資コストを抑える方法を模索していることでしょう。

SaaSはライセンス購入後、クラウドにアクセスすればすぐに様々な機能が使える点が魅力です。例えばCRMのSalesforceなどはライセンス購入してID・Passを割り当てれば、ユーザーはログイン後すぐにサービスを利用できます。もちろん、ベストな形でアプリケーションを使うためには詳細な設定を行う必要がありますが、従来に比べて容易に最先端のテクノロジーを活用することが可能になりました。

一方で、以下のようなクラウドならではの課題も生まれました。

  • 大容量のデータ転送が発生するサービスや大量の通信が発生するサービスなど、ネットワークにかかる負担が大きいサービスは運用が難しい
  • セキュリティリスクが発生する
  • リモートワーク環境でのパフォーマンスを担保する必要がある

1-1. クラウド導入の重要な目的はテクノロジーの進化

調査結果をみると、52%の企業がクラウド導入の目的を「テクノロジーの進化」と回答していることから、多くの企業がデジタル・トランスフォーメーション(DX)を実現したいと考えていることが伺えます。

最新のテクノロジーにより、アプリケーションのパフォーマンス改善やカスタマーエクスペリエンス、 ユーザーエクスペリエンスの向上に加え、従業員の柔軟な働き方も実現できます。

また、既存システムに多額のメンテナンスコストがかかっている場合は、コスト削減につながるケースもあります。
こうした観点から、経営や業務部門の目指すビジネス改善や会社全体のDX実現に向け、柔軟性を担保しつつ最新テクノロジーを取り入れるべくクラウドの導入を進めていることが伺えます。

それでは、具体的にどのような領域にクラウドが導入されており、今後の注力領域はどこなのかを確認していきましょう。

1-2. クラウド導入の現状を確認

クラウドプロジェクトの重要な目的はなんですか

クラウド導入において、最も利用の多かった領域はCRM(顧客管理システム)でした。競争力強化のためには、顧客情報を適切に収集・分析し、企業の提供するサービス改善に役立てることが重要です。多くの企業がカスタマーエクスペリエンス改善やカスタマージャーニー把握のためにCRMを採用しているともいえるでしょう。そのため、営業やマーケターが容易かつ日常的にアクセスできるように、CRMをクラウド化することは効果的です。

また、CRMと同様にコンタクトセンターのアプリケーションをクラウドに移行する事で、カスタマーエクスペリエンスの改善を狙う企業も多いようです。コンタクトセンターもCRMの領域に含まれることがあるため、類似のニーズと捉えることができるでしょう。

次にクラウドに移行が進んでいるアプリケーションは、ERP(基幹システム)です。
既に66%の企業が「ERPをクラウド化し始めている」と回答しており、更に54%が今後の導入計画でERPを挙げています。このことから、より重要な課題に足してアプリケーションを導入したいと考えるユーザーが多いということを推測できます。

最後に、「クラウド移行済みアプリケーション」と「今後移行予定アプリケーション」の両方で3位となったのはコラボ レーションツールでした。リモートワークの需要拡大などが後押しとなり、Microsoft Teamsなどのコラボレーションツールの導入が進んでおり、導入ハードルの低さからも引き続き活用が広まっていくと考えられます。

ここまでで、現時点でIT部門がどの領域にクラウド導入を進めているかがわかりました。それでは5年、10年先のクラウド導入方針はどのようになっているでしょうか?
次のセクションでみてみましょう。

クラウドではどのようなアプリケーションや製品を使用していますか
クラウドでどのようなアプリケーションにフォーカスしますか

1-3. 今後のクラウド導入方針は重要なシステムの移行と柔軟性の担保

今後のクラウド戦略では、高いパフォーマンスが求められ、一見導入のハードルが高そうな最新技術の導入を狙っています。特に、以下の3つが上位にあげられています。

  1. ハイパフォーマンスコンピューティング(46%)
  2. ビッグデータ分析(44%)
  3. AI(43%)

これらの最新テクノロジーは、自社の商品・サービス自体を進化させる可能性を秘めており、先行できればビジネスにおいての優位性を確保できるわけです。

それでは、それぞれ触れていきましょう。

ハイパフォーマンスコンピューティング

ビッグデータ分析、AIをはじめとした最新技術の土台となるテクノロジーです。VRなどの3Dのデータ処理や最新ゲームなどのグラフィック関連など高いパフォーマンスが求められる領域で期待されています。

ビッグデータ分析

クラウド上で膨大になったデータを解析しインサイトを提供する仕組みです。導き出される気付きを経営判断に活用したり、自社サービスのトレンド分析などに活用できます。更にはAIの精度向上にも役立てられる技術といえるでしょう。
例えば、EC上でユーザーに商品レコメンドをする精度はここに関わってきます。

AI

AIはまだ発展途上の領域であるものの、画像解析やインサイトの提供を促すサービスは既に利用されています。技術革新が進めば、データから示唆を与えることに止まらず、まるで自ら思考しているように自動でサービス提供する基盤になるかもしれません。
今後はあらゆる業界でAIによる新サービスが期待されているといえるでしょう。

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こうした最新テクノロジーを活用するには、必要に応じてリソースを最適化しやすいクラウドサービスが適しているといえます。
また、リモートワークが進む昨今、従業員が各地に点在することによりネットワークトラフィックのコントロール・パフォーマンスの担保・セキュリティマネジメントなど、注意すべき点が出てきています。こうしたポイントに対して、APIやAI、SD WANなど最新技術を活用することで補完をはかる企業が増えています。

  1. 柔軟性の担保
  2. ネットワーク最適化
  3. リモートワーク環境の整備

クラウド化を進めつつ、既存環境との連携を最適化することで、システム面での柔軟性を確保できます。グローバル化した業務環境に適合したIT環境を整備することで、ユーザーに柔軟な働き方を提供することができます。加えて、クラウド利用時のネットワークは、活用度合いが非常に高まっていくため、必要に応じて利用量をコントロールし最適化を図りたいもの。

こうした状況を背景に、SDNやSD WANなどによるネットワークの最適化技術が注目を集めています。

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それでは、こうした柔軟性や、ネットワークトラフィックのコントロール、リモートワークの対応などをスムーズに実現するために利用できるものには何があるでしょうか?

今回の調査で特に注目を集めていた最新テクノロジーを5つピックアップします。

2. クラウドで活用したい最新テクノロジーベスト5

今回の調査でクラウド導入目的を達成するために使うと回答された最新テクノロジーは以下の5つです。

  1. API
  2. エッジコンピューティング
  3. AI
  4. オンデマンドネットワーク
  5. uCPE

多くの企業が今後のIT戦略で求める最新テクノロジーは、クラウドありきで設計されたグランドデザインの柔軟性とスピードを最大限に高めるものが選ばれているようです。

それぞれ、簡単に触れていきましょう。

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2-1. APIテクノロジーの活用

アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)は、クラウドサービスのユーザーが違和感なく複数のサービスや既存のシステムを利用できるよう、システム連携を強化させることが可能です。

DXの土台となる自動化のベースやその仕組みともいえるAPI。DXを進めようとするほど、新しいクラウドサービスが導入したくなりますが、ユーザーは1つの画面から全てのサービスをストレスなく使いたいものです。

APIを利用することで、各クラウドサービスや既存システムを柔軟に繋ぎ合わせ、ユーザーへの利便性を損なわない環境を作りやすくしてくれます。

開発者コミュニティにおいても、APIが最も重要視されており、未来のあらゆるクラウドエコシステムネットワークの基礎になることが期待されています。

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2-2. エッジコンピューティングで分散処理を実現

エッジコンピューティングとは、レイテンシー(遅延)を低減するために、可能な限りデータソースの近くにサーバーリソースを配置することを意味します。
たとえば、リモートワークで分散したユーザーを1箇所のデータセンターに集中的にアクセスさせるのではなく、複数のサーバーに分散してリソース処理を行いつつ、1箇所で統合管理する環境を実現する、といった活用ができます。
47%の企業はクラウド戦略でエッジコンピューティングを重視しており、クラウド移行で最大の成果を引き出すために不可欠な手段と見なしています。

従来の一元化されたクラウドモデルに適したコンピューティングタスクもあれば、IoT、AR、5Gアプリケーションなど、異なるタイプのインフラストラクチャで行うのに適したコンピューティングタスクもあります。
パブリッククラウドとローカルサーバーのハイブリットな構成でエッジコンピューティングを取り入れることで、今後の経営戦略にあったIT環境を実現できるでしょう。

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2-3. AIでクラウドマネジメントも最適化

AIとクラウドは非常に親和性が高く、クラウドを補完してくれるシーンは多いものです。例えば、重要度の高い情報をAIが自動でフィルタリングする、もしくは過剰なネットワーク負荷やサーバー処理の負荷をAIが発見し、自動で分散する、といった機能があります。
また、AIを利用することで、IT部門が人力でIT環境に対する監視をする必要がなくなり、重要なタスクに注力できるといったメリットもあるわけです。
実に42%もの企業がAIを活用したクラウド移行を「信頼している」と回答していることからも、期待が伺えます。

クラウドとAIを組み合わせることで柔軟性、俊敏性の向上やコスト削減、ワークフローの最適化を実現し、DXを促進するエンジンとすることができるでしょう。

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リモートワークが進んだ今、ネットワークはパフォーマンスの向上だけでなく、プロビジョニングの簡易性やニーズに対応する柔軟性で評価される時代になりました。
Coltをはじめ、多くのネットワークサービスプロバイダーがネットワークをソフトウェアで管理するオンデマンド型ソリューションを開発しています。オンデマンド型ネットワークソリューションのメリットは、ITサービスを迅速かつ容易に接続し、コスト効率が高い形で事業を継続し、ネットワークの俊敏性を向上することで高いユーザー満足度を実現できる点です。

多くの企業では、今後数年間にどの程度の帯幅域が必要か予測できない場合がほとんどです。
だからこそ、柔軟なネットワークが未来のクラウドエコシステムに必要不可欠であると考えられていることが調査結果から読み取れます。

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2-4. ユニバーサル・カスタマー・プレミス・イクイップメント(uCPE)の活用

uCPE (ユニバーサル・カスタマー・プレミス・イクイップメント)とは、ルーターやファイアウォールなどの顧客構内にあるコンポーネントを仮想化して配信できる基盤のことです。
こうした仮想化の仕組みによって、ハードウェアやデータセンターなどの管理費用の削減をしつつ、サーバー立ち上げからネットワーク経由でのサービス化まで効率化することができます。

機能を仮想環境で提供する場合、ルーター、ファイアウォール、WANオプティマイザーをGUIですぐに立ち上げてサービスのクラウド移行を進めることができます。
また、uCPEを活用することでSD WANの利用も加速できます。

それでは次に、SD WANについて確認しましょう。

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2-5. リモートワーク環境を支えるSD WAN

SD WANとは、簡単にいうとWANの仮想化技術です。ソフトウェアでネットワーク環境を可視化することで、トラフィックを適切にコントロールすることが可能です。
SD WANにより、ネットワークにおける異なる要素や複数のレイヤーを一元管理できるようになります。リモートワークがクラウド導入を加速させてことで、多くのサービスやアプリケーションをネットワーク経由で利用する環境になり、uCPEと合わせてSD WANの重要性が大幅に高まりました。

SD WANはネットワークトラフィックが集中する重要なポイントになるため、セキュリティには十分に配慮する必要があります。
そのためSD WANの選定にはセキュリティ対策を十分に配慮したベンダーを選択することが重要でしょう。

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通信事業者であるColtは、「SD WANサービス」を提供しています。MPLS回線やインターネット回線などの異なる回線を組み合わせて仮想化されたオーバーレイネットワークを構築し、データの重要度に応じてトラフィックをインターネット回線に迂回させることでWAN環境を最適化します。

3. クラウド導入時の5つの課題とは

ここまでは、APIなどのシステム連携や、ネットワークに対する柔軟性を拡張してくれるuCPE・SD WANなどに注目が集まっていることが分かりました。

一方で、クラウド導入を進める上での課題や注意すべき点は何でしょうか。
調査結果から、以下の5点が確認できます。

  1. セキュリティ
  2. 既存システム環境からの移行する際の古いインフラストラクチャ
  3. コスト
  4. ネットワーク
  5. パートナーマネジメント

既存システム環境からの移行は、先にご紹介したAPIなどの最新テクノロジーを活用して補完すべきポイントといえます。
また、コストの最適化を図るためにネットワークの仮想化技術の活用するべきです。

それでは、セキュリティやパートナーマネジメントに関してはどのような考え方を持つべきでしょうか。
この2点について、以下に解説します。

クラウドプロジェクトを妨げる主な障壁はなんですか

3-1. クラウド導入時の懸念点

クラウドの導入において確認すべき点は、セキュリティです。クラウドサービスのセキュリティレベル、運用上のセキュリティリスク、ネットワークセキュリティなど多岐にわたります。

今回は、特にクラウド導入において特徴的な点として、クラウドサービスのセキュリティレベルについて、どのように考えるべきか確認しましょう。クラウドが一般化した現在でも、セキュリティリスクは変わらず存在しています。

クラウド導入の際は、クラウドサービスを提供する事業者が、セキュリティに対して十分に対策をとっているかどうかを確認する必要があります。

セキュリティチェック項目を作成して各ベンダーへ確認をするだけでなく、提供実績からセキュリティレベルをみることもできます。例えば、金融機関や医療業界など、セキュリティ要件が高いといわれる業界の導入事例が多ければ、その分信頼できるクラウドだといえます。

3-2. どのようにクラウドパートナーを選定するのか

クラウドプロジェクトを成功の鍵は、パートナーとの連携です。 クラウド移行プロジェクトにおいては、経験の豊富さや過去の提供実績に加え、新しい技術を提供できるかどうかも決め手といえます。
さらに、ユーザーの業種・業態や、利用用途に対する親和性も重要なポイントです。

ここでは、先進性と実績、導入の多い業種が分かるように、代表的なクラウドサービスを比較しました。
各社ごとに特徴があるので、自社のクラウド戦略に合わせたクラウドプラットフォームを選定する必要があります。

サービス名 AWS Azure OCI Google Cloud IBM Cloud
メリット システムの堅牢性とシェア率の高さ Microsoft製品との 親和性 リーズナブルな価格体系 Googleの各種サービスを支える強固なインフラ AI・機械学習への適性が高い
適する業種
利用目的
新技術分野のサービスを提供する企業 Microsoft 365やTeamsなどのMicrosoft製品を利用している企業 Oracle Databaseを活用している企業 ビッグデータ解析を活用する企業 IBM WatsonなどのAIを用いたデータ活用を行う企業

4. まとめ

今回は、クラウド導入における現状・今後の計画から将来的な展望について、企業の見解を調査した結果をまとめました。多くの企業がクラウド導入により、ITの先進性と柔軟性の向上を期待していることがお分かりいただけたと思います。
また、CRMやERPのクラウド化が進んでいること、今後ハイパフォーマンスコンピューティングやAIなど更に重要度の高い領域もクラウド化する方針であることが読み取れました。

一方で、クラウド導入を進める上ではネットワークにも柔軟性・拡張性が求められると認識している企業も多いことから、APIやAI、SD WANなどの最新テクノロジーを活用したネットワーク最適化がトレンドであると伺えます。

自社のIT環境を見直し、クラウド計画の効果を最大化するためには、クラウドそのものだけではなくクラウド活用のために最適な環境をトータルで考えることが極めて重要です。だからこそ、各クラウド事業者と強いパートナーシップを結んでいるネットワークパートナーを選ぶことが鍵といえるでしょう。

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