AWSダイレクトコネクトの仕組みと導入メリット、利用方法を解説

AWSダイレクトコネクトは、Amazon Web Services(AWS)のクラウド環境とオンプレミス(企業内のデータセンターやオフィスなどの物理的な場所)を高速かつ安定した専用ネットワーク接続で結ぶサービスです。通常のインターネット接続を経由せず、専用のネットワーク回線を利用するため、データ転送の速度や信頼性が向上し、セキュリティも強化されます。

※本記事ではAWS Direct ConnectをAWSダイレクトコネクトと表記しています。

 

awsダイレクトコネクトのサービス範囲

1. AWSへ接続にはどんな方法がある?

AWSに接続する方法を大きく分類すると、以下の2つがあげられます。

インターネット回線を利用してAWS接続する方法

インターネット回線を利用せずAWS接続する方法

1-1. インターネット回線を利用してAWS接続する方法

インターネット回線を利用して接続する代表的な方法としては、「VPN」があげられます。VPNとは、インターネット回線に仮想的に設置された専用線接続です。安価かつ比較的簡単に導入利用開始できるメリットがある反面、回線状況に依存する接続となることから、他ユーザーの利用状況に影響を受けるなど接続が不安定になるケースがあるというデメリットを抱えています。

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1-2. インターネット回線を利用せずにAWS接続する方法

AWSダイレクトコネクトは、インターネット回線を利用しないで接続する方法のことを指します。「回線の安定性」や「セキュリティ」での大きなメリットを享受することが可能です。

また、AWSダイレクトコネクトは、独立した専用ネットワークとなるため、トラフィック状況の影響を受けずに安定したネットワーク環境を構築することが可能です。複数のユーザーが同時に接続することで発生しうる速度低下や安定性の低下といった悩みが解消されます。パブリックインターネットから切り離されているため、セキュリティ面での強化にもつながり、重要なデータをやり取りする際の信頼性が高まります。

2. AWSダイレクトコネクトを導入するメリット

ここではAWSダイレクトコネクトを導入することで企業が得られるメリットをご紹介します。

2-1. 広い帯域幅と低遅延

AWSダイレクトコネクトは、帯域幅の選択肢も豊富で、1Gbpsから10Gbpsまでの帯域幅を提供しており、企業のニーズに合わせてスケーラブルに対応できます。また、複数の接続を利用することで冗長性を確保し、信頼性をさらに高めることも可能です。インターネットの混雑や変動によるパフォーマンス低下からも影響を受けないため、安定した通信が可能です。

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2-2.セキュリティの向上

セキュリティの向上もAWSダイレクトコネクトの大きなメリットの一つです。インターネットを経由せずに専用線を使用することで、データの盗聴や不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。これにより、企業は重要なビジネスデータや顧客情報をより安全にクラウドに移行し、運用することが可能になります。さらに、AWSのセキュリティ機能と組み合わせることで、データの暗号化やアクセス制御など、多層防御のセキュリティ対策を実現できます。

2-3. コスト効率の改善

AWSダイレクトコネクトはコスト効率も優れています。インターネット経由のデータ転送に比べて、データ転送コストを大幅に削減できるため、長期的な運用コストの低減が期待できます。特に、大量のデータを頻繁に転送する必要がある企業にとっては、コスト削減の効果が顕著です。データ転送量に応じた料金プランを選択することで、予算管理も容易になります。

2-4. 拡張性・柔軟性

さらに、AWSダイレクトコネクトは柔軟性にも優れています。帯域幅を10Gbpsまで拡張でき、多様なビジネスニーズに対応できるため、企業の成長に合わせてスケーラブルなインフラを構築することができます。また、複数の接続を設定することで冗長性を確保し、システムの可用性を向上させることも可能です。

このように、AWSダイレクトコネクトは広い帯域幅と低遅延、セキュリティの向上、コスト効率、そして柔軟性を提供することで、企業のクラウド戦略をサポートします。これにより、企業はより迅速かつ安全にクラウドリソースを活用し、ビジネスの競争力を高めることができるでしょう。

3. AWSダイレクトコネクトはどんな企業にオススメ?

次に、AWSダイレクトコネクトはどのような企業にとって有益なのかをみていきましょう。AWSダイレクトコネクトは以下のような場面で特に有効とされています。

3-1. 大規模なデータ転送

大量のデータを頻繁に移動させる必要がある場合、インターネットを経由した接続では速度や安定性に限界があります。ダイレクトコネクトを利用することで、高速かつ安定したデータ転送が可能になります。

3-2. ハイブリッドクラウド環境

オンプレミスとクラウドの両方を利用するハイブリッドクラウド戦略を採用している企業にとって、ダイレクトコネクトは不可欠です。専用回線を通じてシームレスにデータやアプリケーションを移動させることができ、システムの一貫性と効率が向上します。

3-3. セキュリティ要件の厳しい環境

インターネットを経由したデータ通信は、さまざまなセキュリティリスクにさらされる可能性があります。ダイレクトコネクトは物理的に隔離された専用回線を使用するため、セキュリティリスクを大幅に低減できます。

このように、AWSダイレクトコネクトは、企業のクラウド戦略を強化し、データ転送の効率とセキュリティを向上させるための強力なツールです。大規模なデータ転送やハイブリッドクラウド環境、厳しいセキュリティ要件を持つ企業にとって、非常に価値のある選択肢となります。

4. AWSダイレクトコネクトが提供している接続タイプ

AWSダイレクトコネクトには「専用接続」と「ホスト型接続」の2つの接続方式があります。ここではそれぞれの違いをみていきましょう。

4-1. 専用接続

AWSダイレクトコネクトの「専用接続」とは、AWSダイレクトコネクトで準備されたポートをお客さま占有として接続する方法です。お客さまの指定したAWSダイレクトコネクトロケーションにお客さま専用の1Gbps、10Gbpsまたは100Gbps物理イーサネットポートが割り当てられます。

また、契約単位は1物理ポート(Connection)毎となり、その中で、お客さまは最大50個のプライベートまたはパブリック仮想インターフェイス (VIF) と1個のTransit VIFが利用可能です。さらに、LAG (Link Aggregation Group) を使用して複数の専用接続を組み合わせることで、帯域を増強することも可能となります。

専用接続がおすすめな企業とは?

1Gbps以上の広帯域で専用のネットワークを構築したい、または、1つの接続で、複数のVIFを利用するケースがある企業に向いています。

4-2. ホスト型接続

AWSダイレクトコネクトの「ホスト型接続」とは、AWSダイレクトコネクト デリバリーパートナーが自社ネットワークとAWS との間の物理接続(Connection)を確立し、ホスト型接続をそれぞれのお客さまに提供します。AWSダイレクトコネクトデリバリーパートナーと AWS は、各契約帯域容量に制限した形でホスト型接続のネットワークトラフィックを提供します。

ホスト型接続の接続帯域は、幅広い帯域幅が用意されており、50 Mbps、100 Mbps、200 Mbps、300 Mbps、400 Mbps、500 Mbps、1 Gbps、2 Gbps、5 Gbps、10Gbpsの中から選択することが可能です。

ホスト型接続がおすすめな企業とは?

50Mbpsという低帯域での利用が可能で帯域幅の選択肢が多いため、小規模利用の場合、専用接続タイプと比べて費用面を抑えることができます。単一のVIFの利用を検討されていて、比較的リーズナブルにAWSダイレクトコネクトを利用したい企業におすすめです。

5. AWSダイレクトコネクトを利用する場合の料金

AWSダイレクトコネクトを利用する場合の料金は、いくつかの要素から構成されています。単純な利用料金だけでなく、デリバリーパートナー、APNパートナーへの料金が別途発生する点も考慮する必要があります。以下にてそれぞれの項目を詳しく見ていきましょう。

5-1. 初期費用

まず、初期費用が発生します。これは、新しいダイレクトコネクト接続を設定するための一時的なコストです。初期費用には、物理的な接続の設置や設定にかかる費用が含まれます。具体的な金額は、接続先のデータセンターや選択する接続速度によって異なるため、事前に確認することが重要です。

5-2. データ転送費用

次に、データ転送費用があります。これは、AWSとお客様のオンプレミス環境との間で転送されるデータの量に応じて発生する料金です。データ転送費用は、通常、転送されるデータ量(ギガバイト単位)に基づいて計算されます。特に、大量のデータを頻繁に転送する場合、このコストは無視できない要素となります。AWS内の異なるリージョン間でのデータ転送も別途費用がかかるため、地域選択も重要なポイントです。

5-3. ポート時間費用

さらに、ポート時間費用も考慮する必要があります。これは、ダイレクトコネクトポートの使用時間に基づいて請求される費用です。ポート時間費用は、接続速度と契約するポートの種類(専用接続やホスト型接続)によって異なります。一般的に、接続速度が速いほどポート時間費用も高くなりますが、その分、データ転送の効率も向上します。

この他、追加のオプション費用も存在する可能性があります。例えば、冗長化構成を取るために複数のダイレクトコネクト接続を利用する場合や、特定のセキュリティ要件を満たすための追加サービスを利用する場合などです。これらのオプション費用は、利用形態やビジネスニーズに応じて異なるため、詳細な見積もりをAWSの公式ウェブサイトや担当営業と確認することをお勧めします。


以上のように、AWSダイレクトコネクトの料金は多岐にわたる要素から成り立っており、事前に詳細なコスト分析を行うことで、最適なプランを選択することが可能です。

6. AWSダイレクトコネクトの利用開始手順

AWSダイレクトコネクトを利用開始するまでの手順としては以下があげられます。

6-1. AWSと直接契約する

専用接続タイプであれば可能ですが、専用線の引き込みやネットワーク機器の設定、英語のサポート部門とのやりとりなどを直接実施しなければならないので、かなり非効率です。さらに選択できるプランも限られ結果的にコスト高となるケースが多く見られます。

6-2. APNパートナーと契約する

一方、APN(AWSパートナーネットワークの略)パートナーと契約を結び、APNパートナーが提供するサービスを利用する方法があります。AWSとの直接契約よりもメリットが多いため、多くの企業がAPNパートナーと契約し、AWSダイレクトコネクトを利用している傾向がみられます。

7. APNパートナーを選ぶ際の注意点

AWSには数多くのサービスが存在しているため、APNパートナーの定義が曖昧なケースがみられます。APNパートナーと名乗りながらもAWSダイレクトコネクトをサポートしていない業者もあるので注意が必要です。

AWSダイレクトコネクトサービスデリバリー認定とは?

AWSの様々なサービスの中でAWSダイレクトコネクトをサポートしており、かつ、AWSの技術面やビジネスの実績などにおいて高い審査基準をクリアした事業者だけが取得可能なAWSの公式認定基準です。

パートナー選定に迷った際は、「AWSダイレクトコネクトサービスデリバリーパートナー」を選ぶことをおすすめします。

8. まとめ

AWSダイレクトコネクトを活用することで、企業はより安全で高速なクラウド接続を実現し、ビジネスの成長をサポートすることが可能になります。高い信頼性とパフォーマンスを持つネットワークインフラを構築するために、しっかりと利用手順を把握し、間違いのないパートナー選びと共にAWSダイレクトコネクトの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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