【徹底解説】DDoS攻撃の脅威と対策 サイバー攻撃への備えを万全に

企業のWebサイトやオンラインサービスを狙ったDDoS攻撃は、ビジネスに深刻な影響を与える可能性があります。
本記事では、DDoS攻撃の仕組みから具体的な対策まで、企業のIT担当者やセキュリティ管理者が知っておくべき重要な情報を徹底解説します。

サイバー攻撃の脅威から自社を守るため、今すぐ備えるべき対策とは? DDoS攻撃への理解を深め、効果的な防御策を学びましょう。

1. DDoS攻撃とは

DDoS攻撃とはDistributed Denial of Service attackの略で、「分散型サービス拒否攻撃」という意味です。

攻撃者は、複数のコンピューターやデバイスを使用して、標的となるサーバーやネットワークに大量のトラフィックを集中して攻撃します。

これにより、システムやサービスを機能不全に陥らせる悪意のあるサイバー攻撃が、DDoS攻撃です。

1-1. DDoS攻撃の手法

DDoS攻撃では、大量のトラフィックを送信するために「ボットネット」を使用します。
ボットネットとは、多くのPCなどの機器に感染したマルウェア(ボット)で構成するネットワークのことを指します。
攻撃者はボットネットに指示を送ることで、容易に複数の感染機器を操り、DDoS攻撃を行うことが可能となります。

DDoS攻撃には様々な手法がありますが、ここでは3種類に分類し、それぞれの特徴を解説します。

1-1-1. プロトコル特性を使った攻撃

TCP/IPなどのネットワークプロトコル層に負荷をかける攻撃で、以下の手法が用いられます。

  • SYNフラッド攻撃

インターネットでは、コンピューター間で常に要求(SYN : Synchronize)と応答(ACK : Acknowledge)のパケットを送受信することで通信を行います。

通常は、要求を出したあと応答を待ってから通信を開始しますが、SYNフラッド攻撃では、応答を待つことなく一方的に多くの要求パケットを送り続け、大量の応答待ち状態にすることでリソースを枯渇させ、サービスを停止させます。

  •  UDPフラッド攻撃

UDP(User Datagram Protocol)は動画配信やWeb会議などで利用されるプロトコルで、送受信を確認せず単純にデータを送信します。UDPフラッド攻撃は、この特性を使ってUDPパケットを一方的に送り付け、相手のコンピューターをオーバーフローさせる攻撃です。

  • ICMPフラッド攻撃

ICMP(Internet Control Message Protocol)は、インターネット上での通信状態を確認するためのプロトコルです。大量のICMPパケットを送信することで、相手のコンピューターをオーバーフローさせます。

なお、フラッド(Flood)とは洪水の意味で、サービスに支障を来たすほどの大量のデータを送りつける攻撃のことです。

1-1-2. アプリケーション層攻撃

アプリケーション層攻撃は、Webサーバーなどのアプリケーション層を狙って攻撃を行い、サービス停止を狙うものです。
代表的な手法には以下があります。

  • HTTPフラッド攻撃

大量のHTTPリクエストを送りつけて、Webサーバーのリソースを枯渇させます。自動化ツールを使って、商品ページやログインページなどのURLにアクセスし続けたり、フォーム送信機能を悪用し、大量のデータを送信したりすることで、Webサーバーに負荷をかけます。

  • Slowloris攻撃

少ないパケットを長時間かけてHTTPリクエストとして送信し続け、接続中のセッションを数多く占有する状態を維持します。Slowloris攻撃は、最終的に標的のWebサーバーのリソースを消費し続け、正当なアクセスができない状況に追い込む攻撃です。

1-1-3. リフレクション攻撃

リフレクション攻撃は、第三者のサーバーを踏み台にして、標的サーバーに攻撃を仕掛ける方法です。
具体的には、以下の方法が用いられます。

  • DNSリフレクション攻撃

DNSはドメイン名とIPアドレスを管理するシステムであり、インターネット上には多くのDNSサーバーがあります。そのうち、脆弱性のあるDNSサーバーを踏み台にして、標的のサーバーに対し大量のDNSクエリを送信し、サービスを妨害する攻撃です。

  • NTPリフレクション攻撃

NTPは、インターネット上のコンピュータや機器の時刻同期に用いられる仕組みのことです。このNTPサーバーを踏み台にして、大量のNTPリクエストを送信し、標的のサーバーに大きな負荷をかけようという攻撃です。

1-2. DDoS攻撃とDoS攻撃との違い

DDoS攻撃と似たサイバー攻撃として、DoS(Denial of Service attack)攻撃があります。DoS攻撃は攻撃元が一台のコンピューターから行われるのに対し、DDoS攻撃は複数のマルウェアに感染したボットなどを使った攻撃です。

インターネットからアクセス可能な脆弱性のあるコンピューターやサーバーなどを踏み台とすることが多いため、DDoS攻撃の方がより大規模かつ防御が困難です。

1-3. DDoS攻撃の主な目的とは

DDoS攻撃の主な目的として、以下の5つが挙げられます。

  • 金銭の要求

攻撃者は、標的となる企業や組織にDDoS攻撃を仕掛けたうえで、金銭を要求します。近年では、ランサムウェア攻撃と組み合わせて、被害企業から多額の身代金を要求するケースも増えています。

  • サービスの妨害

攻撃者は、ターゲットとなる企業や組織のWebサイトやサービスを停止させ、業務を妨害したり、顧客に損害を与えたりすることを目的としています。これには競合他社の妨害や、政治的・イデオロギー的な理由による攻撃も含まれます。

  • ビジネスの損失や評判の低下

ターゲットとなる企業や組織の評判を低下させ、社会的信用を失墜させることを目的としたものです。DDoS攻撃によってサービスが停止すれば、顧客からの信頼を失うだけでなく、株価の下落などの経済的な損失にもつながります。

  • 政治活動や抗議行動

政治的な主張を掲げたグループや団体、または特定の国・地域の主義に反する組織などが、抗議活動の一環で攻撃している事例が確認されています。

  • 嫌がらせ

攻撃者が、特定の個人や組織に対して、嫌がらせをするためにDDoS攻撃を仕掛けることもあります。これには、個人的な恨みや報復、単純ないたずらやサイバー犯罪のへの対策確認なども含まれます。

1-4. DDoS攻撃の標的となる業界は

DDoS攻撃は、あらゆる業界が標的となりえますが、StationX(アメリカのサイバーセキュリティトレーニングやコンサルティングの企業)の調査によると、金融サービス業界をターゲットとしたDDoS攻撃が全体の34%も占めています。

銀行や証券会社などの金融サービス業界は、大規模な金融取引や個人情報を取り扱うことから、ひとたびDDoS攻撃を受けると、甚大な影響があります。
DDoS攻撃とランサムウェア攻撃を組み合わせた攻撃も増加しており、金融機関にとって大きな脅威となるでしょう。

参照:StationX  “Top +35 DDoS Statistics (2024)” April 10,2024

2. DDoS攻撃による被害とは

DDoS攻撃は、企業や組織に多岐にわたる深刻な影響を及ぼします。その被害は単なるサービス停止にとどまらず、金銭的損失、社会的信用の低下、さらには情報セキュリティリスクにまで及びます。

ここでは、DDoS攻撃がもたらす具体的な被害とその影響について解説しましょう。

2-1. サービス停止

DDoS攻撃の最も直接的な影響は、標的となったサービスやシステムの停止です。影響はさまざまですが、Webサーバーダウンやオンラインサービスの機能停止、ネットワークインフラの麻痺などが考えられます。
これにより、ユーザーはサービスにアクセスできなくなり、顧客対応や取引が滞るだけでなく、企業の業務に深刻な影響を与えることになります。

2-2. 金銭的なビジネス損失

DDoS攻撃がもたらす金銭的損失は、企業に深刻な影響を与えます。最も直接的な被害としては、サービス停止に伴う売上の減少が挙げられるでしょう。

オンラインショップやデジタルサービスを提供する企業にとって、数時間のダウンタイムでさえ、多くの収益悪化を引き起こしてしまいます。さらに、この影響は長期化するかもしれません。
既存顧客との取引機会を逃すだけでなく、サービスの信頼性低下による顧客離反や、評判の悪化による新規顧客獲得の機会を失い、将来の収益に影響を及ぼす深刻な問題となります。

2-3. 社会的信用の低下

DDoS攻撃を受けた企業は、社会的な信用低下に直面するでしょう。たとえば、セキュリティ対策の不備を指摘され、メディアでの否定的な報道やSNSでの炎上により、ブランドイメージが大きく傷つくことが考えられます。

これに伴い、顧客や取引先からの信頼が失われ、企業の評判が低下したうえ、株価の下落など投資家からの信用にも悪影響を与えてしまいます。こうした信用低下は、市場シェアを減少させ、人材採用を困難にし、そして企業価値の失墜につながります。

2-4. 情報漏えい

DDoS攻撃自体は、直接的に情報漏えいを引き起こすものではありませんが、攻撃者がDDoS攻撃を他の攻撃の隠れみのとして利用し、その間にデータ窃取を行う可能性は考えられます。

これらの被害は相互に関連しており、一つの攻撃が複数の面で企業に打撃を与える可能性があります。

したがって、DDoS攻撃対策は企業の全体的なサイバーセキュリティ戦略の一環として位置づけられるべきです。

3. DDoS攻撃を受けないための対策

DDoS攻撃は、さまざまな手法でターゲットのサービスやシステムを妨害するため、効果的な対策を講じることが重要です。以下に、具体的な対策について説明します。

3-1. インフラの強化

DDoS攻撃を防ぐためには、以下のようなネットワークなどのインフラ強化が考えられます。

  • ネットワークの冗長化

複数のインターネット接続回線や、地理的に分散したデータセンターを利用することで、単一障害点を減らし、攻撃の影響を分散させます。

最新の冗長化とは?ビジネス継続性を確保するベストプラクティス

  • トラフィックフィルタリングの強化

ファイアウォールやIPS(侵入防止システム)を導入し最新の状態を維持し、不正なトラフィックを効果的にフィルタリングすることで攻撃を防御します。

  • 負荷分散装置(ロードバランサー)の活用

トラフィックを複数のサーバーに負荷分散させることで、特定のサーバーへの負荷集中を防ぎます。

  • アプリケーションレベルの保護

WAF(Web Application Firewall)などのサービスを導入し、IPSでも検知することのできない攻撃や、パラメータの改ざんなどの攻撃、アプリケーション層のDDoS攻撃にも対応します。

  • DDoS対策サービスの活用

ネットワークベンダーのバックボーンで、 DDoS攻撃を検知・遮断するサービスです。

トラフィックを直接コントロール、フィルタリングすることにより、ネットワークに異常が発生した際に自動防御を実施します。

3-2. 強固な監視体制

DDoS攻撃を早期に検知し、迅速に対応するためには、強固な監視体制の構築が必要です。

とくに、以下のポイントに注目することが重要となるでしょう。

  • 異常検知システム

機械学習を活用した異常検知システムを構築することで、異常なトラフィックを自動的に識別し、アラートを発信することが可能です。たとえば、特定のプロトコルの急激な増加や、通常とは異なるパケットサイズの分布などを自動的に識別し検知します。

さらに、これらのシステムは継続的に学習を重ね、新たな攻撃パターンにも適応していきます。

  • 24時間365日のネットワーク監視

専門の監視チームを設置し、高度な分析ツールを使用してリアルタイムでネットワークトラフィックを監視し異常事態に備えます。これには、トラフィック量、パケットの種類、送信元IPアドレスの分布などの多角的な分析や状況に応じた対応が含まれます。

たとえば、特定のIPアドレス範囲からの突然の接続増加や、通常とは異なる時間帯での高トラフィックなどを即座に検知し、影響を最小限に抑え、情報共有と原因分析を同時に進めます。

  • 対応手順の策定とシミュレーション

DDoS攻撃が発生した際の対応手順を事前に策定し、定期的に訓練を行うことが重要です。

対応手順は主に以下の6つのステップで構成されます。

  1. 初期評価:攻撃の規模と影響を迅速に判断する
  2. 情報共有:社内外の関係者と連携し、情報を適切に共有する
  3. トラフィック制御:攻撃トラフィックを特定し、フィルタリングを実施する
  4. リソース拡張:状況に応じてインフラを増強する
  5. 状況監視:攻撃の進展を観察し、対策を随時調整する
  6. 事後分析:攻撃終了後、詳細な分析を行い改善点を整理する

これらの手順を、定期的な訓練を通じてチーム全体に浸透させるようにしましょう。

迅速で適切な対応が被害の最小化に寄与するはずです。

3-3. クラウド事業者が提供するDDoS対策サービスの利用

大手のクラウド事業者は、それぞれ以下のような高度なDDoS対策サービスを提供しています。

  • Amazon Web Services Shield
  • Google Cloud Armor
  • Microsoft Azure DDoS Protection
  • Oracle Cloud Infrastructure Web Application Firewall

クラウド事業者が提供するDDoS対策サービスには、多くのメリットがあります。
まず、これらのサービスは大規模なクラウドインフラストラクチャを活用しているため、大規模なDDoS攻撃にも効果的に対応できる高いスケーラビリティを持っています。

また、クラウド事業者が常にサービスを更新することで、最新の脅威に対する保護を維持できます。自社でインフラを構築・維持するよりもコスト効率が高くなるでしょうし、クラウド事業者のセキュリティ専門家のノウハウを活用できることも魅力です。

世界中に分散したデータセンターを活用することで、地理的に分散した攻撃にも対応できるグローバルな対応も可能となります。これにより、企業は自社のリソースや専門知識に大きく依存することなく、高度なDDoS対策を実現できるでしょう。
その結果、サービスの可用性が向上し、ビジネスの継続性が確保されます。

また、セキュリティチームは他の重要なセキュリティタスクに集中できるようになり、全体的なセキュリティ体制の強化にも繋がります。

Coltテクノロジーサービス株式会社は、24時間365日の監視によりDDoS攻撃を徹底的に防御する「DDoS対策サービス」を提供しています。高度なネットワークセキュリティにより、より安心して企業のネットワークが利用できます。

4. まとめ

DDoS攻撃は年々高度化・大規模化しており、企業にとって非常に深刻な脅威となっています。適切な対策を講じることで、攻撃のリスクを軽減し、事業の継続性を確保することが重要です。

最新のセキュリティ対策技術の導入によって、サイバー攻撃への備えを万全にしましょう。

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