ネットワークが遅い原因は?回線速度を低下させるボトルネックを解消する方法を解説
グループウェアやコミュニケーションツール、基幹業務システムのためにクラウドサービスを活用することがますます一般的になっています。しかし、クラウドやインターネットへの接続にはネットワークパフォーマンスの課題がつきものです。大量のトラフィック、帯域不足、設定ミスなど、ボトルネックとなる原因はさまざまであり、企業にとっては大きな懸念事項です。
本記事では、ネットワークのパフォーマンスを低下させている原因やそのメカニズムを解説したうえで、「ボトルネック」を解消するためのソリューションをご紹介します。
目次
1. そもそもボトルネックとは?
ボトルネックとはどういう状態を言うのか、スーパーマーケットでのレジを例に考えてみましょう。レジには、会計を待つ10人以上の買い物客が行列になっています。しかし、レジの担当者は一人しかおらず、行列はなかなか進みません。このように、業務停滞や生産性低下を引き起こしている工程・箇所を瓶の首が細くなっている部分に見立て「ボトルネック」と言います。
レジ担当者の人数を増やすか、レジ機器の処理速度を向上させれば待ち行列は短くなりスムーズに流れる、つまりボトルネックが解消します。
ネットワークも同様で、流れるデータ量に比べ、接続機器や回線速度が十分でないと、ボトルネックが発生し通信性能が低下することになります。先ほどのレジの話をネットワークに喩えると、レジ待ちの行列はネットワーク上のデータのトラフィックに相当し、レジ担当者の処理スピードはネットワークの回線速度といえます。
ネットワークのボトルネックを解消するためには、原因を調査した上で、より高性能な機器や設定を導入したり、回線速度を向上させる必要があるのです。
2. クラウドが遅い?ネットワークパフォーマンスに注目
クラウドサービスやSaaSアプリケーションの業務利用が活発化している一方で、十分な性能が得られていないケースも少なくありません。データの送受信やアプリケーションの応答時間が遅くなると、業務効率は低下することになります。性能が出ない原因はさまざまですが、ここではネットワークパフォーマンスの課題にフォーカスして、原因を深掘りしてみましょう。
2-1. 企業内WANの帯域不足や接続多様化に起因する速度低下
多くの企業では、各拠点からWANを介してデータセンター等を経由してインターネットへ接続する形態、いわゆるセンター集中管理型のネットワーク構成を採用しています。
クラウドサービス活用が増えてくると、大量のトラフィックだけでなく、同時に外部のサーバと多くのセッションを張るため、やりとりするデータ量も著しく増加します。これにより、拠点とデータセンター間のWAN回線に圧迫が発生し、帯域不足による速度低下が発生します。また、データセンターからインターネットへの接続部分が、通信のボトルネックになることもあります。
たとえば、Microsoft 365利用時は、1ユーザあたりのセッション数が非常に多くなる傾向があります。1ユーザあたり30セッション程度を必要とすることもあり、それだけデータ量が多く、ネットワークリソースを消費することとなります。
加えてハイブリッドワーク導入により、働く場所や接続機器の多様化が企業ネットワークを複雑にし、帯域不足に陥ることも考えられます。
2-2. ネットワーク機器のボトルネック
旧式の接続機器にボトルネックが発生することがあります。
スーパーでのレジの担当者は手際よく対応しているのに、レジの機械そのものが古く処理性能が悪いのかもしれません。あるいは、最新式のキャッシュレス決済に対応しておらず、操作に手間がかかり、無駄に時間がかかっていることも考えられます。
つまり、レジの機器自体にボトルネックが発生していることになります。
クラウドサービスやSaaSの利用が増えることで、企業ネットワーク内で使用しているルーター、ファイアウォール、プロキシなどのネットワーク機器にも大きな負荷がかかることになります。例えばオンプレミス環境で稼働していた社内システムが、パブリッククラウドに移行したことで、ファイアウォールやプロキシ経由の通信が増加し、ネットワーク機器にボトルネックが発生することが考えられます。
また、旧型のルーターやスイッチなどを使っていることに気づかず、スループットが低くなっていることもあるかもしれません。
2-3. ネットワークセキュリティの過剰な制約
セキュリティの確保は、クラウドやインターネットの利用において非常に重要な要素ですが、必要以上にセキュリティ制限をかけることは、パフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。例えば、過剰に通信データの検査や暗号化・復号化を行うことは、通信遅延の発生につながります。また、厳密なセキュリティポリシーを課した特定のウェブサイトへのアクセスや、特定アプリケーションへのアクセス制限による業務生産性低下も考えられるでしょう。
セキュリティ対策は企業にとって最重要課題ですが、過度な制約が従業員のパフォーマンス低下の原因にもつながることは、意識しておく必要があるでしょう。
3. ネットワークボトルネックを解消するSD WAN
ネットワークのボトルネックを解消するための一つの解として、SD WANの導入があげられます。SD WANは、ネットワークトラフィックやクラウド接続の最適化、拠点回線やルーターの運用管理性の向上など、様々な面で効果を発揮します。以下で各項目について詳しく見ていきましょう。
3-1. WANトラフィックの最適化
従来のWANでは、単一の回線にトラフィックが集中したり、バックアップ回線を有効活用できずネットワークボトルネックが発生しやすくなっていました。対して、SD WANは複数の回線を組み合わせて、トラフィックを分散させることが可能です。利用するアプリケーションの重要度や種類に応じて適切なルーティングを選択し、自動的に切り替えることができます。これにより、ネットワークの性能を最大限に引き出すことができ、ネットワークパフォーマンス向上を実現します。
以下の記事ではSD WANの仕組みについて簡潔に説明しているので、併せてご一読ください。
3-2. クラウド接続の最適化(ローカルブレイクアウト)
各拠点からクラウドサービスにアクセスする際、従来の方法ではすべてのトラフィックが企業の本社やデータセンターを経由して、インターネットに接続されていました。しかし、SD WANではクラウド接続の最適化を行うために、「ローカルブレイクアウト」と呼ばれる方法を活用します。ローカルブレイクアウトは、特定のクラウドサービスへのアクセスを、各拠点からインターネットに直接接続している回線経由で行う手法のことをいいます。
ローカルブレイクアウトにより、特定のクラウドへの接続遅延を削減し、通信の効率化と応答時間の短縮を実現します。同時に、データセンターに流れるトラフィックは削減するため、データセンター側の回線の効率利用につながり、ネットワーク機器の負荷を軽減することになります。
3-3. 拠点回線やルーターの運用管理効率を向上
従来のネットワークでは、拠点ごとの回線やルーター機器ごとに個別の設定や管理が必要であり、拠点数の増加に比例して膨大な手間や時間がかかっていました。SD WANの導入により、各拠点やネットワークを仮想化し、クラウド上に設置されているコントローラーで一元管理することが可能となります。ネットワーク管理者はリモートで設定変更を行えるため、運用管理の負荷を大幅に軽減することができます。
また、さらなるクラウド利用拡大に伴って増大するトラフィック監視なども行えるため、コストを抑えた管理につながります。
4. SD WAN導入時のセキュリティ対策の重要性
企業がSD WANを導入する際に考慮しなければならない重要な要素の一つが、セキュリティ対策です。
データセンターを経由する場合は、トラフィックを一元管理できるため、セキュリティを担保できますが、ローカルブレイクアウトによりクラウドやインターネットとの直接接続が増えることで、攻撃やデータ漏洩のリスクが高まるため、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
SD WAN導入に最適なセキュリティ基盤
SD WAN導入時に効果的なセキュリティ対策を実現するために注目されているのが、SASE(Secure Access Service Edge)です。自社データセンター内ですべてのセキュリティを制御するのではなく、 SASEは、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドに移行し、クラウド上からセキュリティを強化しようというフレームワークです。
SASEは、 SWG(SecureWebGateway)、CASB(Cloud Access Security Broker) 、ZTNA(Zero Trust Network Access) といった、セキュリティやネットワークの技術要素をベースにした機能群で構成されています。
SD WANと組み合わせることで、ユーザーは効率的かつ安全なネットワークアクセスを享受できます。SASEの導入により、企業はSD WANを利用しながら、セキュリティリスクを最小限に抑え、ネットワークパフォーマンスの課題を解決することができます。
5. SASEを実現するZscaler ソリューション
SASEを実現するための代表的なセキュリティ製品の一つがZscalerです。Zscalerの提供するクラウド型統合セキュリティソリューションは、ファイアウォールやURLフィルタリングサービスなどをクラウド上で提供し、セキュリティリスクを抑えるソリューションです。
5-1. Zscalerとは
Zscalerは接続先や用途に合わせて、「Zscaler Internet Access」と「Zscaler Private Access」の2つのサービスがあります。
Zscaler Internet Access
Zscaler Internet Accessは、インターネットやSaaSアプリケーションへのアクセスに対して、安全に接続するためのクラウド型プロキシです。ファイアウォールやプロキシサーバーといった従来のオンプレミス型のセキュリティ機器とは異なり、クラウド上で動作するため、データセンターやユーザーの拠点にハードウェアを設置する必要がありません。Zscaler Internet Accessは、URLフィルタリングやアンチマルウェアといったSWGの機能をベースに、CASBの機能も統合しており、安全なインターネットアクセスを提供します。
Zscaler Private Access
Zscaler Private Accessは、自社データセンターやパブリッククラウド上のアプリケーションに安全にリモート接続するためのソリューションです。ログイン後も多要素認証などを組み合わせて、セキュアなアクセスを実現します。
従来のVPNとは異なり、ZTNAの機能をベースに、より細やかで安全なセキュリティ制御を可能とします。
Coltでは、Zscaler Internet AccessとZscaler Private Accessの2つのソリューションを「セキュアネットワークゲートウェイサービス」として提供しています。
ColtはZscalerと直接接続し、安定したパフォーマンスと高品質なセキュリティを実現しています。
5-2. SD WANとZscalerの相乗効果
SD WANを活用することで、拠点間WANの最適化と、ローカルブレイクアウトによるクラウド接続のパフォーマンス改善を同時に実現することができます。
さらに、インターネット接続時のセキュリティリスクを軽減するために、Zscalerソリューションを組み合わせることで、より効率的で安全なネットワークアクセスを可能にします。
SD WANとZscalerの相乗効果によって、高いパフォーマンスとセキュリティ強化の両方を兼ね備えたネットワーク環境を構築することができます。
6. まとめ
今後、ますますクラウドサービスの業務利用が活発になり、ハイブリッドワークが進むことで、企業ネットワークはさらなる柔軟性を求められることになります。そのためにも、SD WANのようなテクノロジーを活用し、クラウドや拠点間WANも含めたネットワークアクセスをクラウドへのアクセスを円滑化し、ネットワーク環境の進化に備える必要があるでしょう。
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